馬房掃除
今日は珍しくというか初めて、牧場の仕事について書いてみます。ひょっとすると何回か書くかもしれません。
1回目は馬房掃除についてです。
牧場を始める前からいくつかの牧場で運営の仕事を見せてもらったりしていました。
出入口だけに滑り止めのためにゴムシートを敷いているところもありますが、ほとんどの馬房の床はコンクリートです。そして、敷料(オガ粉)が分厚く敷いてあります。これは馬が前掻きなどをして、コンクリートの硬い床面を露出させてしまうと滑って転倒する危険があるためです(もちろん、これは良心的なところの話で、床がコンクリートでかつオガ粉が薄いところもたくさんあります)。
このやり方をしているところは、馬房掃除をして新しいオガ粉を表面に足した時の床を見るとフカフカでとっても気持ちよさそうです。この方法では通常の馬房掃除ではボロ取りや尿とりを表面しかやりません。表面にある露出しているボロと、(もし、あればですが)比較的表面に近いところにある尿を取り、表層だけを混ぜて均一にして、とった分だけの新しいオガ粉を足します。このため、埋没してしまったボロ(馬が自分で粉砕して中に押し込めたボロ)や下の層まで染み込んだ尿はとられることはありません。
この方法は十分に乾燥した地域なら問題にならないのかもしれません。取り残されたボロや尿はすぐに周囲のオガ粉に水分を奪われ、下層で細菌たちが時間をかけて無害なものへと分解していってくれる、という手筈です。
ところが、ものごとはそううまくいきません。日本のほとんどの地域では高温多湿です。とくに梅雨時期や夏では乾燥するよりも早く悪玉の嫌気性細菌が繁殖します。そして、細菌のついた尿やボロが、表面の新しいおが粉を踏み抜いた馬の蹄の中に詰まり、腐敗の速度を早めます。私はこれが多くの乗馬クラブで蹄叉腐乱(や真菌性の蹄の病気)がなくならない原因だと思っています。
私は自分の牧場の馬房を造るにあたって、上記のやり方をやめるにはどうしたら良いかを考えました。
一番大きい問題点はオガ粉を分厚く敷かなければならないことです。
それはクッション性を考えれば避けられないことですが、逆に考えれば床自体のクッション性をよくすればオガ粉は薄くても良いことになります。そこで、床面をすべてゴムマットで覆うことにしました。
そして、オガ粉の量は尿を十分に吸いとるだけの厚みとします(尿が表面に残ってしまうほど薄ければ、それが蹄に詰まってしまうのでダメです)。
毎日の馬房掃除では、尿もボロも完全に取り除きます。そして、とった分だけの新しいオガ粉を足せば、いつもきれいな状態になります。
しかし、実際には問題が出ます。ボロについてはいいのですが、尿は完全に取り切ることは不可能です。
これは自分でやってみればすぐに分かることですが、ちょっとでも湿っているオガ粉を全てとってしまおうなどと考えると、信じられない程の分量になります。
では実際にどうするのかというと、尿溜まり(実際に尿をしたところ)は迷うことなく完全に取り除きます。そして、(完全に乾燥しているようにみえる、)きれいなところもフォークを入れて空気を混ぜます。
そして問題は、その中間なのですが、それは馬が踏んだり寝転がったりして汚れを中途半端に広げてしまったところです。
この内、比較的マシなところはきれいなところと同様に空気を入れるために、天地をひっくり返したりします。
比較的汚れているところは捨てます(捨てるか残すかの見極めはなかなか難しいのですが、重さと色でだんだんわかるようになってきます)。これで、馬房の中に残っているのはきれいな山と比較的きれい(残っている中では汚れている)山になります。(作業中に誤って、汚れの度合の違う場所と混ぜてしまないことが大切です。)
で、後者(汚れている方)を捨てたところに、前者(きれいな方)を後者のところに移動します。そして、きれいだったのをその場所に移動します。そしてmなにもなくなったところに新しいオガ粉を足します。
文章にするとややこしいのですが、要するに、オガ粉の汚れが強い順に次々に移動していき、もともと1番きれいだったところに新しいオガ粉を足されることになります。オガ粉の汚れの度合いの順にローテーションしていくことになります。
こうすると、残っている中でもっとも汚れているオガ粉が次の日には排出されることになります。
ここでは簡単のため4分類(きれい・汚い・中間(ややきれい・やや汚い))で説明しましたが、実際には馬の汚し方に従って山の数はもっと多くなります。
でも、飛び地にしてしまうと移動させるための労力が余計にかかるので、最初にもっとも尿で汚れているところの目星をつけ、そこをまずとってしまいます。そこを起点にしてその周囲で汚れているところを順々に進めていきます。ボロだけのところはうまくボロだけをとりオガ粉はなるべく捨てないようにします(残したオガ粉は汚れていないので同じ分類の山に戻します)。慣れてくれば、馬によって汚す場所の予想がつくので、いちいち山を作らずに汚れた場所を移動しながら、一つ前に篩ったオガ粉をおいていけるので、労力を減らすことができます。
この方法の難しいところは、目で見て汚れの順番に作業の流れを作らないといけないところにあります。もう少し簡易なやり方法もあります。(例外はありますが)だいたいの馬はドアの方を向いて用をたすことが多いので、後部(ドアから一番遠い側)のほうが汚れていることが多い、という傾向を利用します。
馬房掃除を必ず、最後方から始めます。もし、その場所があまり汚れていなかったら、そこだけ山にする必要がありますが、順番は必ず後列から前に進めていきます。そして、最後に、新しいオガ粉は必ず、最も前に足すことになります。
この方法は馬の汚し方にかかわらないので、最適解にはなりませんが簡単ですし、なにより、馬房掃除を終えた出来上がりが(手前側が新しいオガ粉なので、)きれいで満足感は味わえます。
上記で説明した、オガ粉の汚れの度合に応じて場所を循環させていく方法(ローテンション法)と、、馬房のオガ粉を均一に混ぜてしまう方法(従来の方法)では、たとえ同じ量のオガ粉を捨てて、同じ量の新しいオガ粉を足していたとしても、汚れの平均値が全然違うことにすぐに気づかれると思います。
また、従来の方法では、一度取り残せば、その後、延々と馬房内に存在し続ける可能性がありますが、ローテンション法では(馬はだいたい同じ所を汚すので、)たとえ取り残したとしても、すぐに排出されるという利点もあります。
1回目は馬房掃除についてです。
牧場を始める前からいくつかの牧場で運営の仕事を見せてもらったりしていました。
出入口だけに滑り止めのためにゴムシートを敷いているところもありますが、ほとんどの馬房の床はコンクリートです。そして、敷料(オガ粉)が分厚く敷いてあります。これは馬が前掻きなどをして、コンクリートの硬い床面を露出させてしまうと滑って転倒する危険があるためです(もちろん、これは良心的なところの話で、床がコンクリートでかつオガ粉が薄いところもたくさんあります)。
このやり方をしているところは、馬房掃除をして新しいオガ粉を表面に足した時の床を見るとフカフカでとっても気持ちよさそうです。この方法では通常の馬房掃除ではボロ取りや尿とりを表面しかやりません。表面にある露出しているボロと、(もし、あればですが)比較的表面に近いところにある尿を取り、表層だけを混ぜて均一にして、とった分だけの新しいオガ粉を足します。このため、埋没してしまったボロ(馬が自分で粉砕して中に押し込めたボロ)や下の層まで染み込んだ尿はとられることはありません。
この方法は十分に乾燥した地域なら問題にならないのかもしれません。取り残されたボロや尿はすぐに周囲のオガ粉に水分を奪われ、下層で細菌たちが時間をかけて無害なものへと分解していってくれる、という手筈です。
ところが、ものごとはそううまくいきません。日本のほとんどの地域では高温多湿です。とくに梅雨時期や夏では乾燥するよりも早く悪玉の嫌気性細菌が繁殖します。そして、細菌のついた尿やボロが、表面の新しいおが粉を踏み抜いた馬の蹄の中に詰まり、腐敗の速度を早めます。私はこれが多くの乗馬クラブで蹄叉腐乱(や真菌性の蹄の病気)がなくならない原因だと思っています。
私は自分の牧場の馬房を造るにあたって、上記のやり方をやめるにはどうしたら良いかを考えました。
一番大きい問題点はオガ粉を分厚く敷かなければならないことです。
それはクッション性を考えれば避けられないことですが、逆に考えれば床自体のクッション性をよくすればオガ粉は薄くても良いことになります。そこで、床面をすべてゴムマットで覆うことにしました。
そして、オガ粉の量は尿を十分に吸いとるだけの厚みとします(尿が表面に残ってしまうほど薄ければ、それが蹄に詰まってしまうのでダメです)。
毎日の馬房掃除では、尿もボロも完全に取り除きます。そして、とった分だけの新しいオガ粉を足せば、いつもきれいな状態になります。
しかし、実際には問題が出ます。ボロについてはいいのですが、尿は完全に取り切ることは不可能です。
これは自分でやってみればすぐに分かることですが、ちょっとでも湿っているオガ粉を全てとってしまおうなどと考えると、信じられない程の分量になります。
では実際にどうするのかというと、尿溜まり(実際に尿をしたところ)は迷うことなく完全に取り除きます。そして、(完全に乾燥しているようにみえる、)きれいなところもフォークを入れて空気を混ぜます。
そして問題は、その中間なのですが、それは馬が踏んだり寝転がったりして汚れを中途半端に広げてしまったところです。
この内、比較的マシなところはきれいなところと同様に空気を入れるために、天地をひっくり返したりします。
比較的汚れているところは捨てます(捨てるか残すかの見極めはなかなか難しいのですが、重さと色でだんだんわかるようになってきます)。これで、馬房の中に残っているのはきれいな山と比較的きれい(残っている中では汚れている)山になります。(作業中に誤って、汚れの度合の違う場所と混ぜてしまないことが大切です。)
で、後者(汚れている方)を捨てたところに、前者(きれいな方)を後者のところに移動します。そして、きれいだったのをその場所に移動します。そしてmなにもなくなったところに新しいオガ粉を足します。
文章にするとややこしいのですが、要するに、オガ粉の汚れが強い順に次々に移動していき、もともと1番きれいだったところに新しいオガ粉を足されることになります。オガ粉の汚れの度合いの順にローテーションしていくことになります。
こうすると、残っている中でもっとも汚れているオガ粉が次の日には排出されることになります。
ここでは簡単のため4分類(きれい・汚い・中間(ややきれい・やや汚い))で説明しましたが、実際には馬の汚し方に従って山の数はもっと多くなります。
でも、飛び地にしてしまうと移動させるための労力が余計にかかるので、最初にもっとも尿で汚れているところの目星をつけ、そこをまずとってしまいます。そこを起点にしてその周囲で汚れているところを順々に進めていきます。ボロだけのところはうまくボロだけをとりオガ粉はなるべく捨てないようにします(残したオガ粉は汚れていないので同じ分類の山に戻します)。慣れてくれば、馬によって汚す場所の予想がつくので、いちいち山を作らずに汚れた場所を移動しながら、一つ前に篩ったオガ粉をおいていけるので、労力を減らすことができます。
この方法の難しいところは、目で見て汚れの順番に作業の流れを作らないといけないところにあります。もう少し簡易なやり方法もあります。(例外はありますが)だいたいの馬はドアの方を向いて用をたすことが多いので、後部(ドアから一番遠い側)のほうが汚れていることが多い、という傾向を利用します。
馬房掃除を必ず、最後方から始めます。もし、その場所があまり汚れていなかったら、そこだけ山にする必要がありますが、順番は必ず後列から前に進めていきます。そして、最後に、新しいオガ粉は必ず、最も前に足すことになります。
この方法は馬の汚し方にかかわらないので、最適解にはなりませんが簡単ですし、なにより、馬房掃除を終えた出来上がりが(手前側が新しいオガ粉なので、)きれいで満足感は味わえます。
上記で説明した、オガ粉の汚れの度合に応じて場所を循環させていく方法(ローテンション法)と、、馬房のオガ粉を均一に混ぜてしまう方法(従来の方法)では、たとえ同じ量のオガ粉を捨てて、同じ量の新しいオガ粉を足していたとしても、汚れの平均値が全然違うことにすぐに気づかれると思います。
また、従来の方法では、一度取り残せば、その後、延々と馬房内に存在し続ける可能性がありますが、ローテンション法では(馬はだいたい同じ所を汚すので、)たとえ取り残したとしても、すぐに排出されるという利点もあります。